ピアニストと股関節のヒンジ
2026/07/14
ピアニストのお客様。
ムーブメントセラピーの第8セッションで、
太ももから膝下、股関節、骨盤から背中まで、
身体のつながりをみていった。
そのなかで、股関節のヒンジを意識した動きと、
胴体と頭がいちばん楽でいられる位置が、はっきりしてきた。
ヒンジというのは、蝶番(ちょうつがい)のこと。
股関節から、上半身を前に倒す働き。
背中を丸めるのではなく、お尻を後ろに引くように動くのがポイント。
ここが使えると、上半身の重さが下までまっすぐ通っていく。
そこから私は、彼女にピアノを弾くときの姿勢の安定のさせ方を話した。
彼女は丹田で安定させようと考えていたけれど、なんだかぐらぐらして、頼りなかった、と語ってくれた。
丹田は、意識のエリア。
彼女はそこで安定させようとしていたけれど、どこか、あやふやだった。
輪郭がぼんやりしていて、つかみきれない。
坐骨が座面に乗って、そこから股関節で折りたためること。
その感覚が入ってはじめて、あやふやだったエリアが、きゅっと濃縮する。
ぼんやりしていた丹田が、はっきり分かるエリアになった。
股関節まで意識して出した音には深みが増す気がする。
それはたぶん比喩じゃなくて、物理的にもそう。
ピアノの音は、指先だけで奏でるものではない。
座面から、骨盤、背中、肩甲骨のあたり、腕を通って、鍵盤まで伝わっていく。
このつながりで、音の色が決まる。
全身がつながったまま落とした一音は、響きも、伸びも、まるで変わってくるはず。
彼女は、技術だけの人じゃない。
その音楽が生まれた土地に身を置き、その空気感を感じ、作曲家がなにを思ってその一音を置いたのか。
そこまで調べ、たどって、演奏に向かう人。
だからこれは、足りないものを足す、という話じゃない。
ただ、この気づきがほんの少し添えられたら、
その音がもう少し深く、もう少し重く、響くのかもしれない。
彼女が頭で思い描き、神経と身体がやり取りをする。
その時間が周波数となって、聞く人に伝わっていく。
私たちは無意識のうちに、さまざまなことを見極め、受け取っている。
世界を見据えて挑戦している彼女の演奏に、少しでも良い影響があったら。
その一助になれたら、嬉しい。
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